これは僕の家の近くにある森です。冬にはよくスノーシューを履いてこの森を散策します。この日も早朝の散策に出かけました。歩き始めてまもなく、まだ夜明け直後の青っぽい光の中でカラマツの上から一頭のエゾリスが「ジーッ」とこっちを見ているのに気が付きました。不思議そうなまなざしにも見え、興味津々という感じにも見えます。
僕はこの後しばらくの間、エゾリスとゆっくりと向き合って撮影をすることができました。動物と人間が1対1で向き合う瞬間、それはなにか不思議な瞬間でもあります。
目と目が合って、お互いがお互いのことを見て何かを思っている。つまり、その時空の中では自分と目の前の相手しか存在していなくて、他には誰も何も関わってはいないという感覚です。
それにしても、冬の朝の森は本当に気持ちが良いです。
東川アウトドアフェスティバル 2014 山田雅幸@on the table
東川アウトドアフェスティバルのもう一つの顔、「フォトギャラリーウィーク」。 11月1日から16日まで期間、町内のカフェをギャラリーに見立て個展会を開催します。 「山田 雅幸」さんの作品に込められた想いや撮影秘話を公開するページです。
東川アウトドアフェスティバル
2014年10月31日金曜日
風雪
厳冬期の屈斜路湖で見たオオハクチョウ。とても強い風が地吹雪を起こし、一瞬辺りがホワイトアウトになる程でした。この日は風にあおられてじっと立っていることもできないほどで、とても写真撮影をしようと思える日ではなかったのですが、何とかこの厳しい風雪の中のハクチョウをうまく表現したいと思い、撮影に挑みました。
地吹雪が吹き荒れる中で翼の中に顔をうずめてじっと耐える姿は、自然界の厳しさとそこに生きる野生動物の強さを感じさせるものでした。氷の上でただひたすら嵐が過ぎ去るのを待つハクチョウの姿がとても意地らしく見えました。
この写真を見ると今でも風の音が聞こえてくるようです。
地吹雪が吹き荒れる中で翼の中に顔をうずめてじっと耐える姿は、自然界の厳しさとそこに生きる野生動物の強さを感じさせるものでした。氷の上でただひたすら嵐が過ぎ去るのを待つハクチョウの姿がとても意地らしく見えました。
この写真を見ると今でも風の音が聞こえてくるようです。
夕影
ベニヒワは冬の間、北極圏から越冬の為に北海道に渡ってくる鳥です。まだ冬の気配が残る3月、太平洋に面した草原地帯で見つけた群れは、頭の上で何度も円を描いて飛んでいました。
夕陽が地平線に沈んでゆく直前、ベニヒワの姿を逆光越しに見ると、伸ばした翼が夕焼けに透けているのが分かりました。その夕焼けに美しく映えるところを捉えるまで、根気よく待ちながら何度もシャッターを切りました。羽ばたく瞬間を捉えたベニヒワの群れは、一羽一羽形が違います。
彼らの一瞬の姿を克明に捉え、このような表現ができるのも「写真」の大きな魅力だと思いました。
夕陽が地平線に沈んでゆく直前、ベニヒワの姿を逆光越しに見ると、伸ばした翼が夕焼けに透けているのが分かりました。その夕焼けに美しく映えるところを捉えるまで、根気よく待ちながら何度もシャッターを切りました。羽ばたく瞬間を捉えたベニヒワの群れは、一羽一羽形が違います。
彼らの一瞬の姿を克明に捉え、このような表現ができるのも「写真」の大きな魅力だと思いました。
長い眠りへ
大雪山の麓で車中泊をしながら撮影をしていた10月末。ある日の夜に降った初雪は一晩で一気に数十センチも積もりました。
夜中、車の中で眠っていた時に、外から雪を踏みしめる足音が聞こえてきて「こんな山奥に誰が来たのだろう・・・。」と思いながら、結局その夜はそのまま眠ってしまったのですが、朝起きてみると車の周りにたくさんのヒグマの足跡がありました。
ヒグマが冬篭りの決断をするのは寒さによるものではなく、雪の量に関係しているといわれています。大抵は雪が積もリ始める頃に冬篭りに入ります。
この足跡の主は、この冬初めての雪があまりにもたくさん積もったので慌ててねぐらへ戻っていったのかもしれません。一定の歩幅で真っ直ぐに山奥に向かって歩いていく様は、はっきりと目指す場所があり、そこに向かう強い意志を感じさせます。この日、森の中には本当にたくさんのヒグマの足跡がありました。深い森に住むヒグマ達はめったに人前に姿を現すことはありませんが、実はこの森の全てが彼らの生活圏。様々な動物達の足跡を映し出す「雪」は私達にたくさんの事を教えてくれます。
夜中、車の中で眠っていた時に、外から雪を踏みしめる足音が聞こえてきて「こんな山奥に誰が来たのだろう・・・。」と思いながら、結局その夜はそのまま眠ってしまったのですが、朝起きてみると車の周りにたくさんのヒグマの足跡がありました。
ヒグマが冬篭りの決断をするのは寒さによるものではなく、雪の量に関係しているといわれています。大抵は雪が積もリ始める頃に冬篭りに入ります。
この足跡の主は、この冬初めての雪があまりにもたくさん積もったので慌ててねぐらへ戻っていったのかもしれません。一定の歩幅で真っ直ぐに山奥に向かって歩いていく様は、はっきりと目指す場所があり、そこに向かう強い意志を感じさせます。この日、森の中には本当にたくさんのヒグマの足跡がありました。深い森に住むヒグマ達はめったに人前に姿を現すことはありませんが、実はこの森の全てが彼らの生活圏。様々な動物達の足跡を映し出す「雪」は私達にたくさんの事を教えてくれます。
静寂
エゾフクロウは夏の間、あちこち移動を続ける鳥ですが、冬になると樹洞(じゅどう)で過ごすことが多くなります。
フクロウの写真を撮るためにはまず、樹洞の場所を知っておく必要があります。
こうして彼らのねぐらを知り、「どこの場所に何がいる」ということを見つけ出すだけでも何年もかかることがあります。野生動物は「そこに行けば必ず会える」というものではないので、動物写真には根気と時間が必要となります。
エゾフクロウのじっとしている様子は、動物写真家に求められる辛抱強さを象徴しているかのようでした。このエゾフクロウは表情がとても穏やかで、寝顔がどこか人間的だったのが印象に残っています。
フクロウの写真を撮るためにはまず、樹洞の場所を知っておく必要があります。
こうして彼らのねぐらを知り、「どこの場所に何がいる」ということを見つけ出すだけでも何年もかかることがあります。野生動物は「そこに行けば必ず会える」というものではないので、動物写真には根気と時間が必要となります。
エゾフクロウのじっとしている様子は、動物写真家に求められる辛抱強さを象徴しているかのようでした。このエゾフクロウは表情がとても穏やかで、寝顔がどこか人間的だったのが印象に残っています。
雄姿
それは晩秋に知床半島にヒグマの撮影に行った時のことです。
彼らの姿を捜し求めて一日中森や川原を歩き回りました。陽が暮れてきた頃、気が付くと尾根の上に一頭のエゾシカがポツンと立っていました。既に冬毛に変わったこの雄ジカは胸元のふくらみと身体全体が一回り大きくなっていることで一層たくましいシルエットとなって目に映りました。
野生動物の撮影ではとにかく毎日あちこち歩き回って目的の動物を探す訳ですが、その中で時々こういった偶然に良い機会に恵まれることがあります。
そんな偶然の出逢いも動物写真の醍醐味かもしれません。
彼らの姿を捜し求めて一日中森や川原を歩き回りました。陽が暮れてきた頃、気が付くと尾根の上に一頭のエゾシカがポツンと立っていました。既に冬毛に変わったこの雄ジカは胸元のふくらみと身体全体が一回り大きくなっていることで一層たくましいシルエットとなって目に映りました。
野生動物の撮影ではとにかく毎日あちこち歩き回って目的の動物を探す訳ですが、その中で時々こういった偶然に良い機会に恵まれることがあります。
そんな偶然の出逢いも動物写真の醍醐味かもしれません。
目覚めの時
これはタンチョウのねぐらの夜明けを撮影する為に、まだ暗い内から待ち続け、
日の出と同時に撮影したものです。
タンチョウはキツネなどの外敵から身を守る為にこのように川の中で眠ります。
夜明けと同時に何羽かが目覚めて岸に上がってきましたが、川の中のタンチョウ
はまだ頭を羽の中に埋めて眠っています。
厳冬期の夜明けはとにかく寒く、気温は氷点下20度を下回ります。
この日も川面から立ちのぼる靄がそのまま凍り付いて、周りの樹に白い霧氷を作るような朝でした。朝日が霧氷をオレンジに染めて鮮やかでしたが、作品では色味を落としてモノクロームにしてみました。タンチョウと霧氷の美しさを引き立てる為には、他の色は不要だったからです。
日の出と同時に撮影したものです。
タンチョウはキツネなどの外敵から身を守る為にこのように川の中で眠ります。
夜明けと同時に何羽かが目覚めて岸に上がってきましたが、川の中のタンチョウ
はまだ頭を羽の中に埋めて眠っています。
厳冬期の夜明けはとにかく寒く、気温は氷点下20度を下回ります。
この日も川面から立ちのぼる靄がそのまま凍り付いて、周りの樹に白い霧氷を作るような朝でした。朝日が霧氷をオレンジに染めて鮮やかでしたが、作品では色味を落としてモノクロームにしてみました。タンチョウと霧氷の美しさを引き立てる為には、他の色は不要だったからです。
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